糖尿病について~私の思い出話3~
 糖尿病の恐ろしさについて知っていただきたくて、私の母が体験したことを書いておりますが、不安をあおってしまったり不愉快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。ここからは暗い内容が続きます。
 私が20代半ばの頃、母が目の手術をしなければいけなくなりました。
 糖尿病が進んで眼底出血が起こり始めたのでした。レーザーで進行を食い止める手術をしていただきましたが網膜剥離まで進んでしまいました。幸い完全な失明には至りませんでしたが物の形がぼんやりと見えるくらいになってしまいました。
 休みの日に家事をしに実家に戻ると、一人でさびしいのかテレビをつけっぱなしで横になっていましたが、よく見えてないのかと思うとかわいそうでたまりませんでした。
 
 ある日、父から電話があり「お母さんが倒れて・・・」との言葉に驚きました。
 昼休みにインシュリンと食事の世話のために帰宅すると台所で倒れて意識がなくなっていたそうです。あわてて救急車を呼び病院に運んでもらいました。脳の血管が破れていたのです。
 糖尿病の影響で血管が非常にもろくなるのだそうです。的確な手術をしていただいたおかげで奇跡的に一命をとりとめました。麻酔が覚めた母は意識もうろうとしていましたが、私の顔を見ると少し涙ぐんで「○○ちゃん、あんたも苦労するなぁ・・・」といいました。脳にダメージを受けたためろれつのまわらないたどたどしい言葉でした。
 それから1か月ほど入院させていただきましたが、本当に先生と看護師さんのおかげで奇跡的な回復をすることができました。ろれつがまわらなかった言葉も、それほど気にならないくらいに戻りましたし、手足が完全に不自由になることも回避できました。
 手術をしてくださった先生は大柄で優しい先生で、
「本当によく回復したね。もう一歩間違っていたら命を落としていたほどだったよ。頑張ろうね。」と励ましてくださいました。今でもこの先生のことは時々思い出し、心の中で感謝の言葉を思っています。

 その後、以前のように自宅療養をすることになりましたが、ちょうど介護保険制度が普及してきた時期でしたので、母も訪問介護に来ていただくようになりました。介護保険というとお年寄りの介護というイメージがありますが、「特定疾病」によって介護認定を受けた40歳以上の人も利用することができます。
 お掃除と食事の用意、着替え、お散歩・・・・ずいぶん助けていただきました。

 ある日いつものように家事をしに実家に戻って、ヘルパーさんが書いた介護サービスの報告書を読んでいると「足の指先にジュクジュクした傷あり」と書かれていました。靴下を脱がせると今まで見たこともないような状態でした。全部の足の指先に、墨で点を付けたような丸い黒い傷があり、露が浮いているよう状態でした。高血糖と動脈硬化が続いて末梢神経や細い血管が傷んで壊疽を起こし始めていました。足先はとても冷たかったです。どうしていいのかわからず家にあった薬で消毒して軟膏を塗り手で温めました。後で診察してもらいましたが、その後気をつけて経過を見ているうちに幸いにもとのように治癒しました。気が付かずに進行してしまうと足の切断にもつながっていた可能性があります。
 糖尿病の重症の方は感覚が鈍くなってしまい痛みに気が付かないことも多いです。また傷の治りが非常に遅くなります。こまめに気を付けなければいけないと思います。

 2006年5月、私は連休を利用して旅行に行っていました。母の状態は小康状態でしたのでさほど心配もせずにのんきに遊び歩いていました。関空に帰ってきて車で帰宅途中にふと実家のある山のほうが気になりました。「このまま実家に行ってお土産わたそうかな~」とちらっと思ったのですが、ちょっと疲れていたので明日にするかと決めてその日は寝てしまいました。
 5日の明け方何度も携帯に電話があって半ば寝ぼけ眼で電話に出ると父が泣き声で「お母さんが死んだお母さんが死んだ・・・」とばかり言っていました。何を聞いてもそればかりで全く意味が分かりませんでした。だって少し前に会ったときは普通に食べたり話したりしていたのですもの・・・。たちの悪い冗談はやめてよと思ったのですがそれは本当に悪い知らせなのでした。
 ようやく事態が呑み込めた私は弟の車に乗せてもらって実家に急ぎました。全然信じることができずに「うそでしょ・・・うそでしょ」とつぶやいていました。家に入ると青い服を着た検死の人が母の体を調べていました。私はまだこのときですら母が息を吹き返してくれるのではと思っていたほどです。
 「母は・・・だめですか」と震える声で聞くと
 「残念ですがお亡くなりになりました。」「死因は・・・?」「おそらく脳出血か急性の心筋梗塞かと思いますが解剖しなければわかりません。されますか?」「・・・・いいえ・・・・」
 
 父の話によると、5時半ごろに母は起きて、父に「お父さん仕事いきや・・・・」といった後、トイレに向かおうとしたのですが突然倒れて数分のうちに息が切れたのだそうです。53歳でした。
 体中の血管がぼろぼろになってしまっていたのだと思います。 
 重症化を知ってからは食べ物に気を付けたり運動をとりいれたりしましたが遅すぎました。
 特に女性の場合は更年期にホルモンのバランスが変わり糖尿病になるリスクも上がるそうなのです。健康な人も気を付けなければいけない時期ですし、もともと糖尿病と診断されているならもっと徹底して体調管理をするべきだったのです。
 後悔の多い思い出ですが、もしこの文章を読んでくださった方がご自身やご家族の体調管理に役立ててくださったら本当にうれしいです。私自身も気を付けていきたいと思っています。
 
 ヘルパーさんが記録してくれた訪問介護サービスの書類2年分は、母が亡くなって10年以上たった今でも大事に手元に残してあります。私の知らない母の様子や言葉が残されています。
「○月○日。訪問時一人でテレビを見ておられる。お声掛けして散歩に出る。あさっては娘さんが来てくれることになっているので楽しみにしていると話される。・・・・・」
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